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【研究職派遣の将来が不安な方へ】新たな選択肢、紹介予定派遣とは

2023/09/28

狭き門を突破しバイオ系の仕事に長く携わってきた方の中にも、与えられる裁量が少なかったり、思うような研究ができなかったりと、現状に不満を感じる方は一定数存在します。また、年数を重ねても給与が上がらず、今後のことを考えると待遇やキャリア形成の面で不安を覚えることもあるでしょう。

バイオ系研究職としての将来像に漠然とした不安を感じている方にとって、転職は1つの選択肢となります。転職することで研究職での経験手技の拡大、専門性の獲得や給与アップを果たせる可能性があります。では一口に転職と言っても、どんな方法があるでしょうか。バイオ系転職によるステップアップの1つとして、「紹介予定派遣」による正社員登用の可能性を考察します。

監修者プロフィール

福山篤史氏
日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント「微生物によるバイオプラスチック生産」を対象とした研究開発の経験を活かし、現職では、政府機関・民間企業に対するバイオテクノロジー・バイオマス由来製品の実装に向けた戦略策定支援、カーボンリサイクル/CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の実装に向けた産官学連携のコンソーシアムの企画・運営を担当。著書に「図解よくわかる スマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス(共著)」「図解よくわかる フードテック入門(共著)」(日刊工業新聞社)。
福山篤史氏

多くの人が直面する研究職継続への不安ー

「狭き門」であるバイオ系企業に就職したものの、経験年数を重ねるにつれて「業務裁量が限定的で望むようなスキルや知識を獲得できないのでは」と不安を抱く方がいます。また、自分の研究が社会の役に立っているのか実感がなかなか得られず、「このままで大丈夫だろうか?」という不安に駆られるケースもあるようです。

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専門知識や手技などの自身のキャリアに関する不安

バイオ系という分野では、工学部などの他の理系分野と比べて道を拓いて成功をつかむのが難しいという現状があります。これは、単に本人の能力というより、他の理系分野と比較して、バイオ系研究職の専門知識や技術を活かして応募できる求人数が少ない傾向にあるからです。また、バイオ系研究職と言っても、それぞれの会社の業務内容は多種多様です。そのため、バイオ系の企業に就職した場合でも、これまで取り組んできた自身の専門分野に携わることができるとは限りません。このような理由から、自分の専門知識や技術を生かして、今後のキャリアを形成していけるのか不安を抱きやすいのです。

給与や将来性などの待遇面における不安

バイオ系研究職では、30~40代になっても受託業務に限定される職域で働いており、自身の望む研究ができないケースも少なくありません。待遇面でも将来性の観点からも、給与の安定しない雇用形態が続くことは不安を覚えます。また家庭を持つなどライフスタイルの変化を見据えた場合に、安定した雇用形態の働き方にシフトチェンジしたいと考える人もいるようです。

バイオ系の転職における「紹介予定派遣」

研究データを見る男性

就職・転職が他の理系分野に比べても難易度が高いバイオ系研究職。そうした事情を踏まえて今後のキャリア形成を目指すうえでは、「紹介予定派遣」が1つの選択肢となるかもしれません。

ここでは、紹介予定派遣と一般的な人材派遣の違い、紹介予定派遣のメリット・デメリット、バイオ系企業において紹介予定派遣が効果的な働き方といえる理由について解説します。

紹介予定派遣とは?一般的な人材派遣との違い

紹介予定派遣とは、最長6カ月の派遣期間に働くことで職場や業務の適性を見極めてから、本人と派遣先企業双方の合意の元に正社員となる働き方です。バイオ系企業でのステップアップにおいても、選択肢の1つとして注目されています。

紹介予定派遣は、正社員としての雇用を前提とした派遣であるため、いくつかの点で一般的な人材派遣と異なります。主な相違点は以下の3点です。

1つ目に、一般的な人材派遣の派遣期間は最長で3年ですが、紹介予定派遣は6カ月である点です。

2つ目に、一般的な人材派遣では、就業前に企業が人材を書類・面接を通して選考することは禁止されているのに対して、紹介予定派遣では、就業前に書類審査や面接が実施されることがある点です。そもそも派遣社員は派遣会社と契約を結ぶため、企業が就業前に選考することはできません。それに対して紹介予定派遣は、いずれ派遣先で正社員として働くことを前提にしているため、就業前に書類審査や面接が実施されることがあるのです。

3つ目に、一般的な人材派遣では派遣期間中は派遣社員として業務を遂行する一方で、紹介予定派遣では双方の合意があれば、派遣期間中に企業の直接雇用に切り替わることがある点です。

紹介予定派遣のメリット・デメリット

紹介予定派遣の最大のメリットは、職場の雰囲気や業務内容を実際に体験できる点でしょう。面接や企業のWebサイトだけではわからない、日常の職場環境や同僚との関係性、身につけることのできる技術・スキルを肌で感じることができます。

実際の業務に参加することで、自分のスキルや関心事が職場のニーズと一致しているかどうかを判断でき、ミスマッチを避けられます。職場の雰囲気や文化に適応するのが難しい場合、早い段階で気付くことができ、将来のキャリア選択に役立つ情報を入手できるという点もメリットでしょう。

また、派遣会社が転職先を選ぶ際にアドバイスしてくれたり、条件交渉を代行してくれたりするため、個人で転職活動を行うより負荷を減らせます。「キャリアアップや待遇改善を目的とした転職をしたものの、環境も待遇も期待外れだった」という事態を回避できるでしょう。

逆に紹介予定派遣のデメリットは、派遣先に正社員として雇用されるとは限らない点です。契約社員として直接雇用される可能性もあるため、自らの転職の目的が待遇改善なのか、専門性の追求やスキルアップなのかを明確にしておく必要があるでしょう。同時に、契約期間が限定されているため、次の仕事が確保できるかも考慮することも必要です。

また、派遣期間中の条件と、直接雇用契約を結んだ後の条件は、必ずしも一致しないことがあります。そのため、直接、雇用契約を結ぶ際には、事前の契約内容の確認が不可欠です。

バイオ系職種における紹介予定派遣との相性

専門性が高く、生物学やバイオプロセスの理解が必要なバイオ系職種は、最適なマッチングが難しいのが現状です。そのため、業務内容や職場環境を体験できる紹介予定派遣は、求職者にとってメリットが大きい制度といえるでしょう。

企業側としても、専門人材はそもそも採用枠が少なく、育てるにもコストがかかるため、適性を見極めて最適なマッチングをすることは非常に重要です。自社の研究に合った人材を確実に採用するためには、企業側も慎重にならざるを得ず、他の理系分野よりも採用マッチングの難易度も高くなります。

その点、紹介予定派遣は求職者のスキルや人となりも踏まえて判断できるため、ミスマッチが少なくでき、求職者、企業側の双方に「Win-Win」をもたらすシステムといえます。

派遣の選択でその後のキャリア形成も変わる

テクノロジー ビジネス

一般的な人材派遣と紹介予定派遣のどちらを選択するかにより、その後のキャリア形成が異なってきます。また、キャリアの問題以外にも、ワークライフバランスや待遇など考慮すべき要素はさまざまでしょう。もし、自分の望む勤務地や内容など、働く条件を重視する場合は一般的な人材派遣が向いていますし、企業への正社員登用を目指すのであれば、紹介予定派遣を選択すると良いでしょう。

正社員登用を果たすうえで必要なこととは

紹介予定派遣において重要な点は求職者と企業の相性(マッチング)なので、そこが合わない場合は見送られたり、職探しが続いたりする恐れもあります。また、紹介予定派遣から正社員として雇用される際の面接を通過できずに採用見送りになるケースもあります。

紹介予定派遣から正社員登用につながるためには、専門性や技術だけでなく、採用先のビジネスに対する理解や、新しい環境への適応力も求められます。面接の際には基本的なビジネスマナーや人となりも見られます。また、転職の動機の1つが待遇の改善だったとしても、それを全面に押し出すと、給与額や福利厚生のことばかり気にしている印象を与えてしまい、採用見送りになってしまうこともあり得ます。

そのため、紹介予定派遣によって将来的な正社員登用を果たすうえでは、自分の専門性やスキル、どんな分野の研究をしたいかを一方的に主張するだけでは不十分です。採用先のビジネスモデルや顧客、経営戦略を深く理解した上で、自分の持ち味がどのように相手にとってプラスになるのかを伝えられるようにしましょう。

キャリアアップを目指すバイオ系求職者のマインド

バイオ系研究職というマッチングが厳しい業界だからこそ、自分のキャリア形成や研究職に対する強い想いを明確に伝えられる人は、採用側の目にもとまりやすいといえます。「自分の研究がどのように社会の役に立っているのか実感できない」、「もっと深掘りした研究をしたい」、「裁量権を持って業務を推進する立場で研究したい」というマインドを持っている方には、正社員キャリアや紹介予定派遣の応募をおすすめします。

また、紹介予定派遣の期間中に、自分のスキルをアピールし、企業との信頼関係を築くことができれば、正社員として採用される可能性が高まります。紹介予定派遣は、将来的なキャリアの安定を目指す方にとって魅力的な選択肢になるでしょう。

まとめ~バイオ系転職での「紹介予定派遣」はキャリア形成の1つの道筋

【バイオ 転職 キャリアアップのまとめ】
・バイオ系研究職に従事している多くの方は、現在の待遇や業務内容に不安や不満を抱いている
・転職の際に活用したい手段の1つが「紹介予定派遣」
・紹介予定派遣は、現状に満足せずチャレンジしたい方、ステップアップしたい方に向いている

バイオ系企業に就職できた場合でも、その就職先がライフステージにおいて、いつまでも自分に適した環境であるとは限りません。年月の経過とともに自分のライフステージも変化し、その時々で求める待遇や環境が変化するのはよくあるため、転職という選択は持っておきましょう。

もちろん、転職は誰にとっても勇気がいることです。これまで培ってきた経験やスキルを生かしながら、さらにキャリアアップを目指せる職場を見つけることは大変です。特にバイオ企業はそもそも採用枠が少なく、マッチングが難しい分野です。その点で、研究者としての自分の適性を試せる紹介予定派遣は、求職者にとっても採用側にとってもありがたい制度といえるでしょう。

バイオ系研究職で転職を検討している方はぜひ、紹介予定派遣を選択肢の1つに含めてみてはいかがでしょうか。

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