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バイオ系ポスドクは転職も視野に?紹介予定派遣で探す大学以外の道

2023/12/08

大学や公的研究機関などのアカデミアで働く研究者の大半は、有期雇用で勤めている実態があります。例えば、日本を代表する研究機関の理化学研究所ですら、研究者の約8割が有期雇用で働いています。特に間口が狭いバイオ系の研究職においては、無期雇用のポジションにつける人材はかなり限られる状況です。

そうした実態を踏まえると、アカデミアにこだわらずに民間企業への転職も1つの選択肢になるでしょう。民間企業での転職を目指す際には、紹介予定派遣を活用することもひとつの選択肢になるでしょう。

ここでは、バイオ系研究者をめぐる現状について概観した上で、アカデミアから民間企業への転職を視野に入れたキャリアパスについて解説します。

監修者プロフィール

福山篤史氏
日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント「微生物によるバイオプラスチック生産」を対象とした研究開発の経験を活かし、現職では、政府機関・民間企業に対するバイオテクノロジー・バイオマス由来製品の実装に向けた戦略策定支援、カーボンリサイクル/CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の実装に向けた産官学連携のコンソーシアムの企画・運営を担当。著書に「図解よくわかる スマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス(共著)」「図解よくわかる フードテック入門(共著)」(日刊工業新聞社)。
福山篤史氏

アカデミアの研究職を取り巻く深刻な雇用実態

「博士課程を修了後、ポスドクを経験したのちに無期雇用の教授職に就く」ことは、アカデミアで働く研究者の理想的なキャリアプランの1つでしょう。しかし、実態は多くの研究者が、経済的に不安定な有期契約で働き、教授職へ就く人はほんの一握りです。

文部科学省「研究者・教員等の雇用状況等に関する調査」(令和4年度)によると、約820の大学・研究開発法人で働く研究者・教員・技術者ら747,493人のうち、約半数にあたる364,588人(48.8%)は有期契約であることを発表。

さらにこのうち、2013年4月の改正労働契約法施行をうけ無期契約への転換見込みの人は、2022年9月時点で対象者全体の44.7%、未定41.2%でした。これら実態を踏まえ、かねてから任期付き研究者の雇い止めが懸念されていました。

出勤する社会人と統計データのイメージ

アカデミア研究職の雇い止め問題とは

アカデミア研究職の雇い止め問題が起きた背景には、2013年に施行された改正労働契約法があります。

有期契約を減らして安定した雇用の増加を実現することが「無期転換ルール」導入の本来の目的でした。無期転換ルールは、契約期間が5年を超えれば、労働者の意思表示のみによって、無期雇用労働者(正社員)になれる制度です。ただし、研究職には特例が適用され、無期転換期間は10年とされました。

有期契約だった研究者も、10年を経て無期契約に転換すれば、雇用の心配をすることなく落ち着いて研究に勤しむことができるでしょう。しかし、この無期転換ルールは、実際には使用者の雇い止めを促す側面があることがかねてから指摘されていました。なぜなら、無期転換が可能となる前にアカデミアが「雇い止め」を選択する可能性があるからです。

アカデミアでの学術研究はその性質上、予算確保が難しい点があります。そのため、無期雇用になる研究者の人件費リソース確保の観点から、無期転換期間を迎える前に雇止めの選択をせざるを得ないというのが理由です。

結果的に、問題となる2023年4月を経過した後に文部科学省が発表した「研究者・教員等の雇用状況に関する調査」(令和5年度)によると、特例対象者12,397人のうち、80.5%にあたる9,977人が「無期労働契約を締結した」または「締結する権利を得た」ことが分かりました。

この数字だけみると、雇い止め問題は回避されたように思えますが、実際に「無期労働契約を締結した者」は全体の4.1%に過ぎず、76.4%は無期転換申込権を有しながら有期労働契約を継続している状況です。

自ら進んで情報を集めることが主体的キャリア形成のカギに

文部科学省から大学等の各研究機関へ、無期転換ルールの適用を免れる意図での雇い止めは行わないよう、継続的な働きかけがなされていました。

しかし、文部科学省の調査によると、2022年度中に雇用契約を終了する特例対象者に対して、「キャリアサポートの取り組みは行っていない」と回答した研究機関の割合は高く、令和4年時点では98.3%でした。

アカデミアでのこうした実態に基づいて考えると、任期付き研究者のポジションを変えたいと考える場合、主体的に情報収集し、キャリア形成を図る姿勢が欠かせないと言えます。

アカデミアから民間企業への転職も1つの選択肢

現在所属している大学や研究機関の雇用環境に不安を感じているなら、他機関へ移ることが1つの選択肢です。実際、特例対象者全体のうち8.4%は「無期転換を希望せず、他機関に移りたい」と回答しました。そして、その理由として「雇用不安がなくなるから、研究に専念できるから」(89.0%)が最も多く、「長期的なキャリア形成の見通しや、将来的な生活設計が立てやすくなるから」(86.0%)が続きました。

中には、年齢を重ね、ライフステージが変わり、ポスドクや任期付き研究職、研究補助で続けることに不安を感じる人もいるかもしれません。特にバイオ系の就職を取り巻く環境は他の分野よりも特に厳しく、研究者として優秀でも就職先が見つかりにくいという現状もあります。そこで、アカデミアで雇用環境の改善を目指すより、思い切って民間企業に転職するという選択肢も視野に入れるべきでしょう。

オフィスでの会社面接採用試験シーン

民間企業への転職の実績は多数存在

実際、アカデミアで研究職を経験した方が民間企業に転職する場合、有利な点が多くあります。例えば、アカデミアで培った論理的思考力、ライティングスキル、情報収集能力は民間企業でそのまま通用するケースが多くあります。企業からはアカデミアで高いスキルを身に付けた人材を採用することで、教育コストを削減できる点からポジティブに捉えられることもあります。

バイオ系企業もヘルスケア分野などのトレンドの変化に対応するために即戦力を求めています。アカデミアで研鑽を積んだ研究者は、中途採用される可能性が年々高くなっている状況です。

アカデミアと民間企業間の転職事例は多数あります。アカデミアで培ったスキルや経験を企業の応用研究に活かせることも多いため、マッチングが上手くいけば戦力として活躍できるでしょう。

転職の準備のための情報収集は不可欠

現在、アカデミアで研究職に就いている方でより良い環境を志向している場合は、転職市場の情報感度を高めておきましょう。

無期雇用を目指して既存の研究機関に留まる、他の大学や研究機関に移る、あるいは、民間企業へ転職するなど、さまざまな選択肢があります。

自分がどの選択肢でも選べるよう、常に転職に関するアンテナを張ることが大切です。日頃から転職の準備を欠かさないように心がけ、チャンスを逃さないようにしましょう。

紹介予定派遣の応募枠へのチャレンジも

アカデミアに所属する有期雇用の研究者の多くは、雇用環境に不安を抱いています。中長期的な視点に立って、安定したキャリア形成を目指すなら、紹介予定派遣の応募枠チャレンジも検討してみましょう。

通常の派遣の派遣期間が最長3年であるのに対し、紹介予定派遣では派遣先でのその後の直接雇用を前提にしているため、派遣期間は6カ月で終了します。その間、企業での研究環境を体感でき、もし双方が合意すれば、派遣契約期間中でも直接雇用に切り替わるケースもあります。

中長期的なキャリアを構築する入り口として、正社員登用を目指せる紹介予定派遣は有望な選択肢になるでしょう。

人材派遣会社や転職エージェントの活用を

個人でも紹介予定派遣の求人を申し込むことは可能です。しかし、より多角的なアドバイスや、自分にはない視点で職探しをする上では、人材派遣会社や転職エージェントの活用をおすすめします。エージェントに相談することで、アカデミアで培った自身のキャリアを次へ活かす方法など、アドバイスがもらえます。また、自分では認識していなかった、自身の強みを言語化してくれることもあるでしょう。

特に求人倍率が高いバイオ系研究職での正社員雇用を目指すのは、容易ではありません。自分の研究者としての専門分野や強み、スキル、アピールポイントなどを言語化するなど、念入りな準備が必要です。またそれを、希望する企業にしっかりと伝えることが重要になります。1人で取り組むのに不安な場合には、バイオ系研究職の転職に強いエージェントを活用しましょう。

まとめ~現在、身を置く環境だけが研究職のすべてではない

【「民間企業」「アカデミア」の違いに関するまとめ】
・アカデミアは有期雇用の研究者が約半数というのが実態
・民間企業への転職で、研究職として働くことができる期間が変わる可能性がある
・紹介予定派遣の活用で、派遣期間後の正社員、さらには次なるキャリアに挑戦

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大学や公的研究機関では、任期付きの有期雇用が研究者の約半数というのが実態です。無期転換ルールが適用される機関においても、対象期間が経過する前に「雇い止め」や、キャリア形成のサポートがなされていないことが深刻な問題になっています。

一方、アカデミアで培った研究者としてのスキルや経験は、即戦力を求める民間企業でも歓迎される傾向にあります。アカデミアから思い切って民間企業に転職し、正社員として雇用されれば、安定したキャリアパスを手に入れることが可能です。民間企業への転職は、有力な選択肢の1つになるでしょう。

アカデミアから民間企業への転職を検討しているなら、紹介予定派遣を活用するのがおすすめです。派遣期間中に派遣先企業の研究環境を体感でき、ミスマッチが生じにくいため、新たなキャリアに挑戦しやすいでしょう。

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