【研究職のキャリアパス】バイオ分野の多様な働き方を3モデルで紹介!

大学の理系学部や大学院の修士・博士課程で、特定の専門分野の研究に情熱を注いできたバイオ系学生。学生として培ってきた研究職の専門性を活かせるキャリアパスは、近年ますます多様化しています。

かつては「大学や公的機関で研究を続ける」、あるいは「企業の研究職として1つの会社に勤め上げる」といったキャリアが一般的でしたが、今では個々の価値観やライフプランに合わせ、働き方を柔軟に選択しやすい時代になりました。

本記事では、バイオ研究者のキャリアパスの具体的なイメージが掴めるように、大学卒業後の3人のモデルケースをご紹介します。年齢とともに変化するキャリアステージと、それぞれのステージでの取り組みを解説していますので、自身のキャリアを考えるヒントを見つけてみてください。

監修者プロフィール

福山篤史氏
日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント「微生物によるバイオプラスチック生産」を対象とした研究開発の経験を活かし、現職では、政府機関・民間企業に対するバイオテクノロジー・バイオマス由来製品の実装に向けた戦略策定支援、カーボンリサイクル/CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の実装に向けた産官学連携のコンソーシアムの企画・運営を担当。著書に「図解よくわかる スマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス(共著)」「図解よくわかる フードテック入門(共著)」(日刊工業新聞社)。
福山篤史氏

【研究職のキャリアパス(1)】社内昇進で専門性を極めるAさん(男性)の働き方事例

1つの企業で着実に経験を積み、専門性とマネジメント能力を武器にキャリアアップしているAさん。研究者としての専門性を深めながら、組織の核となる人材へ成長していくキャリアパスです。

年齢 キャリアステージ 具体的な取り組み
22歳 大学卒業(修士課程進学) 農学部で応用微生物学を専攻。発酵・醸造科学への関心から、同大学の大学院修士課程へ進学し、専門知識と研究技術の習得に励む。
24歳 修士課程修了・大手食品メーカーへ就職 発酵技術に強みを持つ食品メーカーに研究職として就職。新規機能性食品の素材の開発を担う基盤技術研究所に配属される。
30代前半 プロジェクトリーダーを任される 入社後、地道な実験や考察が実を結び、成果が認められるように。次第に複数のプロジェクトでリーダーを任されるようになり、チームを率いる責任感を学ぶ。
30代後半 課長職(管理職)へ昇進 これまでの研究実績と、プロジェクトリーダーとしての経験が評価され、研究開発部門の課長に昇進。自身も研究に携わるプレイングマネージャーとして、チームの成果向上に貢献する。
40代前半 より上位の視座への挑戦 課長職としてチームを率いる中で、個別の研究テーマだけでなく、研究所全体の方向性や、事業戦略と研究開発を結びつける、というより広い視点に関心を持つようになる。
40代後半 部長職へ昇進 これまでの実績と広い視野が評価され、基盤技術研究所の部長に昇進。担当領域の研究戦略の策定や予算管理、人材育成など、組織を動かす役割を担う。
50代 研究所長に就任 研究所長に就任。長年培ってきた技術的知見を活かし、研究所全体の運営を担う。中長期的な視点で、所属する組織の研究開発をリードしている。

【Aさんのキャリアパスのポイント】

Aさんのキャリアは、1つの組織で研究者としての専門性を深めながら、マネジメントスキルを身につけて組織に貢献していく、代表的なモデルの一つです。

長期的な視点でキャリアを築くことで、安定した基盤の上で専門性を高め、組織内で影響力を持つポジションを目指すことも可能です。企業の研究開発の組織運営や事業経営に関心がある方にとって、参考になるキャリアパスです。

【研究職のキャリアパス(2)】ライフイベントと両立する働き方へ、Bさん(女性)のキャリアチェンジ事例

企業で研究者としての一歩を踏み出し、結婚・出産というライフイベントを経て、ワークライフバランスを重視する働き方を選択したBさん。柔軟なキャリアチェンジで、自分らしい生き方を実現していくモデルです。

年齢 キャリアステージ 具体的な取り組み
22歳 大学卒業(修士課程進学) 生命科学系の学部を卒業後、同大学の大学院修士課程に進学。分子生物学の研究室に所属し、研究に没頭する。
24歳 修士課程修了・製薬会社へ就職 大学院で培った専門性を活かし、国内の製薬会社に研究開発職として就職。創薬研究の初期段階である、探索研究チームに配属される。
20代後半 研究員としてスキルアップ 複数の創薬プロジェクトを経験。細胞培養や遺伝子解析など、幅広い実験技術やデータ解析能力を習得し、研究員として着実にスキルを身につける。
30歳 結婚・産休・育休取得 結婚。その後、第一子を妊娠し、産前産後休業・育児休業を約1年半取得。初めての育児に奮闘する。
32歳 職場復帰と葛藤 育休後は元の部署に復帰。しかし、急な子どもの発熱による早退や、時間に制約のある中での実験スケジュールの調整に難しさを感じるように。「研究は続けたいが、今の働き方では難しいかもしれない」と、育児との両立に課題を感じ始める。
34歳 転職を決意・時短勤務へ 自身の経験とスキルを活かしつつ、ワークライフバランスを重視できる働き方を模索し、医薬品開発業務受託機関(CRO)のデータマネジメント部門へ転職。時短勤務制度を活用し、仕事と育児を両立できる環境を選ぶ。
40代 専門性を活かした安定的なキャリア 時短勤務ながらも、製薬会社での研究経験を活かしてチームに貢献。データの品質管理や後輩の指導、業務プロセスの改善提案などを行い、チーム内で信頼される存在になる。
50代 ベテランとしてチームを支える 長年の経験で培った知識とスキルは、部署にとって重要な存在に。仕事と家庭のバランスを取りながら、チームを支えるベテランとして活躍。自身の経験から、若手社員のキャリア相談に乗ることもある。

【Bさんのキャリアパスのポイント】

Bさんのキャリアは、ライフステージの変化に合わせて働き方や働く場所を柔軟に変えていくモデルです。研究職としてのキャリアを諦めるのではなく、専門性を活かしながら「転職」という選択を通じて自分らしい働き方を実現しています。

特にCRO(医薬品開発業務受託機関)などは、勤務時間の柔軟性が高い求人も見られ、ワークライフバランスを重視したい方にとって選択肢の一つになります。

【研究職のキャリアパス(3)】専門知識を活かす、Cさん(男性)の異業種へのキャリアチェンジ事例

博士号を取得後、企業の研究職を経験したCさん。その高度な専門性を武器に、30歳でコンサルティング業界へ。研究で培った経験・能力を異なるフィールドで活かすキャリアパスの一つです。

年齢 キャリアステージ 具体的な取り組み
22歳 大学卒業(博士課程進学) 理学部生物学科を卒業後、より深く生命科学を探求したいと考え、大学院の博士課程へ進学。再生医療分野の研究室で、研究に打ち込む。
27歳 博士号(理学)取得・製薬会社へ就職 博士課程で培った知識と研究能力を活かすべく、製薬会社の再生医療研究部門に研究職として就職。企業での製品化を目指した研究開発に携わる。
20代後半 研究開発と事業化のギャップを感じる 研究のやりがいは感じる一方、1つの製品が世に出るまでの時間や組織の壁に直面。「自分の知識を、もっとスピーディに事業へつなげられないか」という思いが募る。
30歳 コンサルティングファームへ転職 自身の専門知識と、研究活動で培った論理的思考力などを活かせるフィールドとして、コンサルティングファームへ転職。ライフサイエンス・ヘルスケア部門に配属される。
30代前半 コンサルタントとしてスキルを習得 これまでとは異なる環境で、ロジカルシンキングや情報収集・分析、資料作成といったコンサルタントとしての基礎スキルの習得に励む。
30代後半 マネージャーへ昇進 再生医療分野の深い専門知識とコンサルティングスキルの両方が評価され、マネージャーに昇進。プロジェクトチームを率いて、クライアント企業の経営課題解決に取り組む。
40代以降 業界の専門家として地位を確立 複数のプロジェクトで実績を重ね、製薬・バイオ業界内での人脈と信頼を構築。専門知識を活かしてクライアントに貢献し、業界の専門家として活躍している。

【Cさんのキャリアパスのポイント】

Cさんのキャリアは、研究で培った高度な専門性と論理的思考力を、ビジネスという異なるフィールドで応用していくモデルです。

研究職からコンサルタントへの転身では、求められるスキルが変わるため、簡単な道ではありません。しかし、専門家として独自のポジションを築き、大きな裁量をもって活躍することも可能です。自身の専門知識を軸に、よりビジネスサイドで価値を発揮したいと考える方にとっては、魅力的な選択肢の一つです。

多様な研究職のキャリアパス実現に向けて

今回ご紹介した3つのキャリアパス事例は、数ある選択肢の中のほんの一例にすぎません。

Aさんのように1つの企業で専門性を極める道、Bさんのようにライフイベントに合わせて働き方を変える道、Cさんのように専門性を武器に異業種へ挑戦する道。どのキャリアが正解ということはなく、あなた自身の価値観や目標に合った道を選ぶことが何よりも大切です。

「自分のキャリア、このままでいいのだろうか?」
「働き方を見直したい」
「研究職としての自分の市場価値が知りたい」

もしあなたが少しでもキャリアに関する悩みや迷いをお持ちなら、一度立ち止まって自身の経験やスキルの「棚卸し」をしてみてはいかがでしょうか。

「Laboしごと」では、バイオ業界に精通したキャリアコンサルタントが、あなたの経験や希望を丁寧にヒアリングし、キャリアの棚卸しから非公開求人のご紹介、面接対策まで、一貫してサポートいたします。キャリアに関するご相談は、いつでもお気軽にお寄せください。あなたの可能性を最大限に引き出すお手伝いをさせていただきます。