バイオ系の就職先は研究職だけじゃない!理系大卒・院卒に広がる多様なキャリアパス

多くのバイオ系学生が研究職への就職を志望するのは、とても自然なことでしょう。大学や大学院で培った専門性を活かし、研究に携わりたいという思いは、これまでの理系の学びの延長性上にある歓迎すべき目標です。

その一方で、ふと立ち止まって「本当に研究職が自分に合っているのだろうか?」「他の選択肢も知っておきたい」と、考える方も少なくありません。

バイオ系の知識やスキルは、研究職以外でも幅広く活かせる場面があります。キャリアの選択肢を柔軟に考えることは、自分の“適性”や“希望する働き方”に気づくきっかけにもなります。

今回は、バイオ系学生が研究以外の分野でも活躍できる職種や業界についてご紹介します。

監修者プロフィール

福山篤史氏
日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント「微生物によるバイオプラスチック生産」を対象とした研究開発の経験を活かし、現職では、政府機関・民間企業に対するバイオテクノロジー・バイオマス由来製品の実装に向けた戦略策定支援、カーボンリサイクル/CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の実装に向けた産官学連携のコンソーシアムの企画・運営を担当。著書に「図解よくわかる スマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス(共著)」「図解よくわかる フードテック入門(共著)」(日刊工業新聞社)。
福山篤史氏

研究職以外でも活かせる!バイオ系人材が輝く業界とは

研究をする様子

バイオ系の知識や実験スキルは、研究職に限らず、さまざまな業界・職種で活かすことができます。
研究職にこだわり過ぎずに選択肢を広げてみると、自分の適性や価値観により合った仕事と出会える可能性が高まります。

Laboしごと」では、業界ごとの職種や働き方の特徴を丁寧に整理しており、研究職以外の求人も豊富に取り扱っています。
ここでは、バイオ系の素養を活かしながら活躍できる業界や職種を紹介します。

製薬・医薬品業界:品質管理や製造支援のプロに

製薬業界では、研究職以外にも「品質管理」「製造支援」「薬事」など、製品の安定供給を支える重要な役割があります。たとえば、実験手法や分析技術に慣れているバイオ系の学生なら、GMP(医薬品製造基準)に基づくデータ管理や工程管理にもスムーズに対応できます。

化学・素材メーカー:試験分析や生産技術もフィールド

化学業界では、材料開発の現場で試験・分析を行う技術者や、生産現場でのトラブル対応・改善活動を担う生産技術職が活躍しています。実験計画を立てて検証するスキルは、製造プロセスの最適化や品質向上においても重宝されます。

食品業界:おいしさと安全性を守る技術者に

食品業界では、製品開発に関わる「商品企画」や「品質保証」の仕事があり、微生物検査や成分分析の知識を活かせます。実験に基づいた論理的な思考は、安全性や品質を科学的に判断する場面で求められる素養です。

化粧品業界:評価試験や製品企画で消費者への橋渡し役に

化粧品の分野でも、成分の安定性や皮膚刺激性を評価するための各種試験が必要です。さらに、研究開発と連携しながら製品化までの道筋を整える「製品企画」では、理系的な視点を活かし、市場ニーズとの橋渡し役を担います。

医療機器・診断薬業界:製品企画・サポート職での活躍

医療機器や診断薬の業界では、理系出身者が「テクニカルサポート」や「製品企画」として、現場の医師や技術者とやり取りしながら製品の理解促進・改善提案を行っています。機器の構造や使用背景を理解し、専門的な会話ができる点で、バイオ系出身者は大きなアドバンテージを持ちます。

さまざまな職種でのキャリアパスと仕事内容

前述のとおり、バイオ系の専門性はさまざまな業界で活かせます。ここでは、代表的な6つの職種について、それぞれの仕事内容や向いている人物像、就職ルートを確認しておきましょう。

1. 研究職

仕事内容
大学や企業の研究部門で、新技術や新製品の開発に向けた実験・データ解析・論文執筆などに従事
基礎研究から応用研究まで幅広い領域がある
向いている人
探究心があり、論理的思考力を持ち、一つのテーマを深く掘り下げるのが得意な方
就職ルート
大学や大学院から新卒で企業研究職に進むほか、ポスドクを経て民間企業へ転職する例も

2. 技術支援職

仕事内容
研究現場での試験補助、検査・測定業務、試薬の準備・管理などを行う
研究者のサポート役として、手を動かすことが中心
向いている人
実験や操作が好きで、正確性を重視し、現場での仕事にやりがいを感じられる方
就職ルート
派遣社員として現場経験を積んだ後、正社員として登用されるケースも少なくない

3. 営業事務・技術営業サポート職

仕事内容
営業担当と連携し、技術的な説明資料の作成、顧客からの問い合わせ対応、データ処理などを担う
向いている人
人とのやり取りが好きで、研究の知識を活かして社会とつながりたいと考える方
就職ルート
研究経験を持つ人材を歓迎する求人もあり、キャリアチェンジとして選ばれることも

4. 生産管理・品質管理職

仕事内容
製品が計画通りに製造されるよう工程を管理し、試験検査やトラブル対応、改善活動などを行う
向いている人
論理的に物事を組み立てられ、全体を見渡して調整・判断する力がある方
就職ルート
技術職を経験した後、マネジメント寄りの職種としてキャリアアップすることも

5. 企画開発・製品企画職

仕事内容
市場やユーザーのニーズを捉え、どのような製品が必要とされるかを企画・提案し、研究・開発部門と連携して形にする
向いている人
創造力があり、研究的な素養とビジネス視点をバランスよく持つ方
就職ルート
大学・企業での研究経験が評価され、製品の理解を踏まえた企画職に進む例も

6. 運営業務(研究施設や技術サービスの運営・サポート)

仕事内容
研究施設の運営補助、備品・人員の管理、マニュアル作成・整備など、施設全体の円滑な運営を支える
向いている人
細やかな対応が得意で、調整力やオペレーションの管理に長けている方
就職ルート
技術支援職などから将来的にキャリアアップし、マネジメント職に就く例も

研究職以外の就職先を知るメリットとは?

研究を行う女性

大学や大学院で専門性を深めてきたからこそ、研究職を目指すのは自然な選択と言えるでしょう。その一方で、少し視野を広げてみることで、あなたの強みや希望によりフィットする職種と出会えるかもしれません。研究職以外の選択肢を知ることのメリットを具体的に見ていきましょう。

「自分に合った働き方」が見つかる

キャリア形成においては、「やりたいこと」だけではなく「適性があるか」や「継続できるか」も重要です。たとえば、「一人で黙々と分析する作業が得意」「チームでの連携がやりがいに感じる」など、自分の性格や働き方の好みに合った職種を選ぶことで、無理なく長く働き続けることができるでしょう。研究職以外の働き方を知ることで、自分らしいキャリアのヒントが見えてきます。

バイオ分野の知識を活かせる幅が広がる

「バイオ=研究」だけではありません。先ほど解説したように、製品の企画や品質管理、技術支援、営業支援など、研究以外のポジションでもバイオ系の知識や実験経験が役立つ場面は多々あります。自分の専門性を違った角度から活かせる仕事を通して、新たなやりがいや価値を見出すこともできるでしょう。

研究で培ったスキルが他職種でも武器になる

実験やデータ分析の経験、論理的思考、仮説検証のプロセス理解、粘り強い探究心などは、研究室で培われたバイオ系人材ならではの経験・スキルです。これらは、製品の改良提案や品質トラブルの原因究明、データドリブンな意思決定など、多くの職種で高く評価されます。研究職を離れても、自分の経験は武器になり得ます。

キャリアの新しい可能性が開ける

「研究職でなければ意味がない」と思い込んでしまうと、せっかくの専門性を活かせる可能性を自ら狭めてしまいます。しかし一歩引いて選択肢を見直してみれば、企画、品質管理、教育、運営など、バイオの知識が求められている職種が意外と多く存在していることがわかります。視野を広げることは、新しいキャリアの扉を開く第一歩です。

研究者としての成長につながる

キャリアは一本道ではなく、その時々で軌道修正しながら積み上げていくものです。研究職以外の職種で視野やスキルを広げた上で、将来的に研究職に戻るという選択肢も十分にあります。現場経験やビジネス視点を身につけたバイオ人材は、再び研究に戻った際にも広い視野を持って活躍できる存在になれるはずです。

まとめ

大学・大学院で学んだバイオの専門知識や実験技術、理系ならではの論理的思考や課題解決力は、研究職だけでなく、さまざまな業界・職種でも高く評価される強みです。バイオ系の就職先は多岐にわたるため、自分の適性や希望に合った働き方を選ぶことが無理のないキャリア形成につながります。

研究職以外にも視野を広げることで、新たな可能性ややりがいに出会えるかもしれません。まずはLaboしごとの無料キャリア相談を活用し、あなたの強みや将来の方向性を一緒に整理してみませんか?