【再生医療関連事業③】バイオマテリアル(生体材料)事業の最新動向を解説

こちらのコラムでは、再生医療分野に参入している業種や新たな産業化の取り組みについてシリーズでお届けします。第2弾では「iPS細胞培養受託事業」についてお伝えしました。第3弾となる今回は、「バイオマテリアル(生体材料)」について見ていきましょう。

近年注目されている再生医療分野にはさまざまな業種が参入し、産業化が進んでいます。

特に、「人工関節」のように生体組織と直接接触して機能するものから「ドラッグデリバリーシステム(※)」のように治療を補助するものまで、多様な用途がある「バイオマテリアル(生体材料)」は、今後の医療の発展において不可欠な分野と言えるでしょう。

この記事では、バイオ研究者にとって知っておきたい再生医療分野の関連事業として、バイオマテリアルの概況やトレンド、具体的な事例について解説します。

※ドラッグデリバリーシステム(DDS):薬剤を体内の特定の部位に必要な量、適切な時間作用させる技術のこと

【本記事の概要】

・バイオマテリアル領域には高い成長ポテンシャルがあり、今後の市場拡大が期待されている
・バイオマテリアル領域は高付加価値・高利益率のビジネスだが、開発・規制対応に要する時間の短縮、量産化やコスト削減などの課題もある
・特定のバイオマテリアルを事業の強みとしている3つの企業を紹介する

監修者プロフィール

福山篤史氏
日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント「微生物によるバイオプラスチック生産」を対象とした研究開発の経験を活かし、現職では、政府機関・民間企業に対するバイオテクノロジー・バイオマス由来製品の実装に向けた戦略策定支援、カーボンリサイクル/CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の実装に向けた産官学連携のコンソーシアムの企画・運営を担当。著書に「図解よくわかる スマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス(共著)」「図解よくわかる フードテック入門(共著)」(日刊工業新聞社)。
福山篤史氏

再生医療分野の関連事業「バイオマテリアル(生体材料)」の概況

研究をする様子

「バイオマテリアル(生体材料)」とは、医薬品を除いた合成材料、天然素材、またはそれらの複合材料で、一定期間にわたって人体の組織や器官、またはその機能の一部もしくは全部を代替・促進するために使われる素材のことです。

一般的には、動物組織やコラーゲンのような生体由来材料に加え、合成高分子、金属、セラミックおよびそれらの複合材料が含まれます。

バイオマテリアルの用途は広範囲にわたります。例えば、人工関節や歯科インプラントといった医療分野だけでなく、組織工学や創傷治療、再生医療、さらにはバイオプラスチックなどの分野にも応用されています。その成長ポテンシャルは非常に高く注目されています。

日本では、高齢化人口増加による医療分野への需要拡大やバイオマテリアル技術の進歩などが、この領域の市場の成長を後押しすると考えられています。他方、世界のバイオマテリアル市場は2023年に約1,767億米ドル(約26兆2,525億円)規模へ伸長。2031年には約5,034億米ドル(約74兆8,000億円)に達し、約3倍の規模に拡大すると予測されています。

バイオマテリアル(生体材料)事業の特徴

バイオマテリアル事業には、主に以下の3つの特徴があります。

1.高付加価値・高利益率のビジネスモデル

バイオマテリアルは、医療・再生医療・歯科・整形外科などの専門分野向けに供給されるため、一般的な材料産業と比べて市場価格が高い点が特徴です。

もっとも、バイオマテリアル事業は研究開発費がかかりますが、実用化の際に特許や規制承認を得ることができれば市場を独占できる可能性もあり、そうなれば高い利益率が期待できます。

2.事業分野が広範囲に及ぶ

バイオマテリアル事業の応用範囲は主に医療・再生医療ですが、それだけにとどまらず、産業用途や食品・化粧品分野にまで広がっています。

3.高度な技術と専門知識が求められる

バイオマテリアル事業では生体適合性や分解性のコントロールが重要であり、さらに3Dプリンティングやナノテクノロジーとの連携も進んでいます。これらはいずれも最先端の領域であり、扱う際は高度な技術や専門知識が不可欠です。

生体材料事業の課題

顕微鏡をのぞく男性

医療分野を中心に今後の発展が期待される生体材料事業ですが、以下のような課題もあります。

1.開発・承認コストの高さ

案件によりますが、一般的に研究や臨床試験には数十億円規模の投資が必要となります。必要となる資金の調達が課題となります。

2.長期的な研究開発と規制対応の必要性

生体材料の開発には数年以上かかります。製品化後もすぐに販売できるわけではなく、日本では「PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)」などの承認を要します。規制審査には5〜10年かかるとされており、開発後に短期で収益化することは困難です。

3.量産化とコスト削減の難しさ

バイオ由来の生体材料は安定的に大量生産することが難しく、製造技術の革新が求められます。

4.競争の激化と差別化の必要性

生体材料分野では近年、大手企業の参入が増えています。そのため、ノウハウが限られる中小企業が一定のポジションを維持するには、特許や独自技術による競争力確保が必須です。

5.規制・標準化への対応

生体材料を製品化するにあたっては、各国の規制が異なり、手続きやデータ提出の負担が大きいため、中小企業では対応が容易ではありません。

バイオマテリアル事業に取り組む企業3選

オリンパス テルモ バイオマテリアル株式会社はポラリス・キャピタル・グループ株式会社の子会社で、「セラミックス人工骨」や「金属インプラント」などのバイオマテリアルおよび再生医療ついて、研究開発・製造販売を行っています。

整形外科向けセラミックス人工骨の販売金額では、国内トップクラスのシェアを誇ります。

オリンパス テルモ バイオマテリアルが扱う製品として、以下の3つがあります。

➀膝周囲骨切り術用治療材料:変形性膝関節症に対する膝周囲骨切り手術において使用する製品
➁脊椎疾患用治療材料:後縦靭帯骨化症や頚髄症、頸椎脊柱管狭窄症に対して行われる、椎弓形成術に用いられる材料
➂骨補填材料:骨折などで生じた骨の欠損部分を埋めるために使用する材料

また、オリンパス テルモ バイオマテリアルでは、整形外科向け製品の研究開発を担当する人材を募集しています。求められるスキルなどの一部は以下のとおりです。

【仕事内容】
整形外科向け人工骨などの製品開発業務

■ 必須条件:
・3DCADの使用しての商品開発経験が3年以上ある方
■ 歓迎要件:
・膝周辺骨切り術の臨床成績を改善する製品の技術を持つ方
・整形外科手術向け、もしくは整形外科後療法向けの製品設計と開発、研究経験がある方
・工具や刃物、ねじの設計と開発経験がある方
・有限要素法解析や動作解析の経験がある方
・滅菌医療機器や包装材料の開発経験がある方

三洋化成工業株式会社のバイオマテリアル事業

三洋化成工業株式会社は1949年創業の化学メーカーで、「界面制御技術」を強みとしています。界面活性剤や高吸水性樹脂といった主力製品に加え、他にもウレタン材料や高分子材料、バイオ製品など幅広い分野で既存製品の改良や新規開発などを行っています。

バイオマテリアル事業では、細胞足場材「シルクエラスチン®」を用いた再生医療機器の開発も行っています。細胞足場材は生体内の細胞の増殖や分化を促進させる環境となるもので、再生医療において組織再生を誘導・促進する重要な役割を担います。

「シルクエラスチン®」は生体組織の修復・再生を促進する機能性タンパク質です。半月板再生に関する臨床結果において有望な結果が報告されており、現在は米国市場開拓に向けてパートナーを募集しているフェーズです。

グローバル展開など、今後の取り組みが注目される三洋化成工業では、研究開発部門で新規開発や既存製品の改良などを担当する人材を募集しています。求められるスキルなどの一部は以下のとおりです。

【仕事内容】
高分子材料や界面活性剤、ウレタン材料、バイオ製品などの幅広い分野において新規開発や既存製品の改良

■ 学歴:高専卒以上
■ 必要な経験:研究開発職としての業務経験1年以上(化学業界でなくても可)
■ 歓迎条件:英語を用いたコミュニケーションができる方

金井重要工業株式会社のバイオマテリアル事業

金井重要工業株式会社は1894年創業の繊維機器事業、不織布事業の老舗企業で、さらに医療機器の開発・製造も行っています。

バイオマテリアル事業においては、生体吸収性樹脂を原料とした不織布「生体吸収性・生分解性不織布」や、がんの放射線治療で腫瘍と正常組織の間に配置することで正常組織への放射線被曝を低減する「不織布スペーサ」などを開発しています。

金井重要工業では、2025年3月に大学院・大学・短期大学・専門学校卒業見込みの新卒採用をさまざまな分野で行っているのを確認しました。研究開発などを担当する技術職についても募集しているようです。

【仕事内容】
技術職(研究開発、技術開発、製品開発、設備開発、IT)

■ 応募資格:2025年3月に大学院・大学・短期大学、専門学校卒業見込みの方