バイオ技術者に役立つ資格を4つ紹介!

バイオテクノロジーを用いて研究や開発を行う「バイオ技術者」には、高度な専門知識や技能が求められます。バイオテクノロジーはさまざまな分野で応用されているため、専門家であるバイオ技術者の就職先は創薬、医療、化学、食品、環境、農業など多岐にわたります。

バイオ技術者になるために取得しなければならない資格は特にありませんが、バイオ技術者としての専門性を証明するための資格は存在します。資格を保有していれば、就職・転職活動時の大きなアピールポイントになるでしょう。

この記事では、代表的なバイオ技術者に関する資格を4つ選んで紹介します。バイオ技術者として就職・転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修者プロフィール

福山篤史氏
日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント「微生物によるバイオプラスチック生産」を対象とした研究開発の経験を活かし、現職では、政府機関・民間企業に対するバイオテクノロジー・バイオマス由来製品の実装に向けた戦略策定支援、カーボンリサイクル/CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の実装に向けた産官学連携のコンソーシアムの企画・運営を担当。著書に「図解よくわかる スマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス(共著)」「図解よくわかる フードテック入門(共著)」(日刊工業新聞社)。
福山篤史氏

バイオ技術者認定試験(初級、中級、上級)

バイオ技術者

「バイオ技術者認定試験」は、NPO法人「日本バイオ技術者教育学会」が実施する民間資格です。社会で活躍する技術者に求められるバイオ技術関連の知識を認定する目的で設立されました。

1994年にスタートした日本で最も歴史があるバイオ技術関連の資格試験で、業界における認知度も高い資格です。バイオ技術者認定試験は、初級・中級・上級の3段階で構成されています。

これまで、初級が約28,000人、中級が約38,000人、上級が約9,000人と、合計で延べ約75,000人に認定証を交付(2022年3月時点)しています。

なお、2023年度の試験の合格率は初級が80.7%、中級が75.8%、上級が52% となっており、上級の難易度の高さがうかがえます。

この資格を取得するバイオ技術者の就職先の想定は、製薬、創薬企業から医療系企業、食品メーカーまで、バイオテクノロジーが活用されている幅広い業界が挙げられます。

初級の概要

高等学校で学習するバイオ技術関連の内容のうち、基本的な知識と実験技術を習得していることを認定します。

試験科目は、基礎科目が3つ(基礎生物学、基礎化学、実験技術)、専門科目は4つ(植物バイオテクノロジー、食品バイオテクノロジー、動物バイオテクノロジー、生物工学)のうち1つを選択します。基礎科目3つと専門科目1つの計4科目の知識が問われます。

受験料
2,000円(団体)、3,000円(個人)
受験資格
1.高等学校在校生
2.高等学校卒業生
3.その他、前項と同等以上であることを本学会が認めた者

中級の概要

初級よりさらに深いバイオテクノロジーの知識が問われ、指導者の指示のもとバイオ関連実験を適切かつ安全に実行する能力が求められます。

試験科目は5科目あり、バイオテクノロジー総論、生化学 、微生物学、分子生物学、遺伝子工学です。

受験料
5,000円(団体)、7,000円(個人)
受験資格
次のいずれか1つに当てはまる者
・初級バイオ技術者認定試験に合格し、認定証を取得した者
・大学、短期大学および専門学校のバイオ技術等に関する課程を卒業した者、または2学年修了者および2学年修了見込みの者
・高等専門学校のバイオ技術に関する課程等を卒業した者または卒業見込みの者
・その他、前項と同等以上であることを本学会が認めた者

上級の概要

中級よりさらに深く専門性が問われ、バイオ関連実験を適切かつ安全に実行する能力が求められます。

試験科目は基礎バイオテクノロジー(核酸・タンパク質、安全管理、バイオ機器)と、応用バイオテクノロジー(微生物バイオテクノロジー、動物バイオテクノロジー、植物バイオテクノロジー)となっており、幅広い知識が必要です。

受験料
7,000円(団体)、9,000円(個人)
受験資格
次のいずれか1つに当てはまる者
・中級バイオ技術者認定試験に合格し、認定証を取得した者
・大学、短期大学および専門学校のバイオ技術等に関する課程の3学年修了者または3学年修了見込みの者、卒業者または卒業見込みの者

出典:特定非営利活動法人(NPO法人)日本バイオ技術教育学会「認定試験案内」

技術士(生物工学部門)

生物工学部門の技術士
「技術士」は、科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた者であることを証明する国家資格です。

技術士には「機械部門」や「建設部門」など21のさまざまな領域に関する技術部門があり、バイオ技術者にとって役立つのは「18.生物工学部門」です。

試験には「第一次試験」と「第二次試験」があり、指定された教育課程の修了者は第一次試験が免除されます。第一次試験合格者は「修習技術者」となり、「技術士補」として登録後、指導技術士の下で4年を超える実務経験をした場合などに第二次試験を受けることができます。

この資格を取得するバイオ技術者の就職先の想定としては、創薬・製薬会社をはじめ、バイオベンチャーや食品開発メーカーなど多岐にわたります。

第一次試験の概要

第一次試験では、以下の知識と能力について判定します。

・技術士に必要とされる科学技術全般にわたる基礎知識
・技術士法第4章の規定の遵守に関する適性
・技術士補となるのに必要な技術部門についての専門的学識

求められるレベルは、大学のエンジニアリング課程(工学、農学、理学など)修了程度で、試験科目は基礎科目、適性科目、専門科目 (細胞遺伝子工学、生物化学工学、生物環境工学)から構成されます。

受験料
11,000円
受験資格
年齢・学歴・業務経歴等による制限はなし

第二次試験の概要

第二次試験では、以下の知識と能力について判定します。

・高等の専門的応用能力
・技術士に必要な技術部門についての専門的学識
・高等の専門的応用能力

第二次試験は、筆記試験および口頭試験により行われます。

筆記試験には必須科目と選択科目があります。必須科目は「生物工学」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力に関して。選択科目は、自身が選択した科目(「生物機能工学」または「生物プロセス工学」)についての専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力に関して問われます。

口頭試験は筆記試験合格者のみが受けることができ、技術士としての適格性などについて口述により行います。

受験料
14,000円
受験資格
受験資格 「技術士補」となる資格(技術士第一次試験の合格者あるいはそれと同等と認められる者)を有し、受験申込みを行う時点で次のいずれかに該当すること。

・技術士補に登録し、技術士補として通算4年を超える期間技術士を補助したことがある
・技術士補の資格取得日から、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者の監督のもとに当該業務に従事した期間が通算4年を超える者
・科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算7年を超える者。(技術士補となる資格を有した日以前の従事期間も算入可能)

※ 上記(1)から(3)について、大学院における研究経歴の期間を有する者は、2年を限度として、その期間を短縮可能(技術士補の資格を取得以前であっても、2年を限度として、業務経歴の期間を減じることが可能)

出典:公益社団法人 日本技術士会「18 生物工学部門」

食品衛生管理者

食品衛生管理者
「食品衛生管理者」は、食品や添加物を製造・加工する施設で食品の衛生を管理するための国家資格で、厚生労働省が管轄しているものです。バイオ技術者と直接は関係ないものの、食品関係の研究をする場合には取得しておくと良いでしょう。資格取得者の就職先として想定するのは、食品開発・製造メーカーなどです。

試験の概要

「食品衛生管理者」は、「食品衛生管理者資格取得講習会」を受けることで取得できる国家資格です。規程の講習会をすべて受講し、修了すれば資格取得となります。講習科目と時間数は食品衛生法にもとづいて決まっており、一般共通科目、乳製品関係科目、食肉製品関係科目、添加物関係科目などの内容に関する知識が問われます。

受験料
306,000円 ※令和7年2月3日(月)~令和6年3月6日(木)
受験資格
次のいずれかに該当する者

・医師、歯科医師、薬剤師、獣医師
・学校教育法にもとづく大学、旧大学令にもとづく大学又は旧専門学校令にもとづく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した者
・都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設において所定の課程を修了した者
・学校教育法にもとづく高等学校もしくは中等教育学校もしくは旧中等学校令にもとづく中等学校を卒業した者、または、厚生労働省令の定めるところによりこれらの者と同等以上の学力があると認められる者で、食品衛生管理者を置かなければならない製造業又は加工業において食品又は添加物の製造又は加工の衛生管理の業務に3年以上従事し、かつ、都道府県知事の登録を受けた講習会の課程を修了した者

出典:厚生労働省「食品衛生管理者」

バイオインフォマティクス技術者認定試験

バイオインフォマティクス技術者
「バイオインフォマティクス技術者認定試験」は、2007年度より特定⾮営利活動法⼈⽇本バイオインフォマティクス学会が実施している民間資格です。バイオインフォマティクスの基礎から先端までの基本知識を有し、関連業務への適性が一定レベルに達した人材であることを示します。

テクノロジーの発展に伴い膨大なデータが取得可能となり、近年、そのデータを解析できる人材の需要が高まっています。一方で、バイオインフォマティクス技術者は生物科学、情報科学の両分野を習得する必要があり、その難易度の高さから人材不足が課題となっています。

現在、日本では国を挙げて専門家の育成に取り組んでおり、バイオインフォマティクス技術者認定試験においても文部科学省が後援となっています。

生物科学のほか、情報科学にも精通しているバイオインフォマティシャンは、創薬・製薬会社にとどまらず幅広い分野の業種から必要とされています。

試験の概要

試験の出題範囲は「生命科学分野」「情報科学分野」「バイオインフォマティクス」の大きく3つに分かれています。

試験の出題範囲
試験の出題範囲
受験料
6,000円
受験資格
特になし

出典:特定非営利活動法人「日本バイオインフォマティクス学会」

まとめ

バイオ技術者になるために必要とされる特定の資格はありませんが、今回紹介したバイオ技術者としての専門性を証明するための資格を取得しておけば、就職・転職活動の際に大きなアピールポイントとなるでしょう。

今回は代表的な4つを紹介しましたが、これ以外にもバイオ技術者関連の資格にはさまざまな種類があるため、自分の研究領域や希望する就職先の業務内容などに合わせて選択することをおすすめします。