民間企業でのバイオ系研究職の就職を目指す場合、大企業を志望する方は少なくないでしょう。大企業を志望する動機はさまざまで、知名度が高い企業で働きたいから、という方もいれば、資金が潤沢な大企業なら研究基盤もしっかりしているから、という方もいるかもしれません。
一方、大企業でのバイオ系研究職の倍率は非常に高いという現状があります。そのため、大企業での就職を目指す場合は、派遣などの働き方の選択肢を広く持つことが、キャリアを拓くポイントになります。
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一般的に理系学生は研究室で専門分野を学ぶため、文系に比べて就職率が高いと考えられています。ただ、一口に理系といっても幅広い専攻を含んでいます。職業情報提供サイト「jobtag」によると、例えば建築設計技術者、機械設計技術者、ソフトウェア開発技術者などの職種では有効求人倍率が「1」を超えているのに対してバイオテクノロジー技術者は「0.89」と、求人数が求職者数よりも少ないことがわかります。大学生、大学院生ともにバイオ系の就職内定率は、他の分野と比較して低いのが現状です。
就職が容易ではないバイオ系研究職で、人気の高い大企業への就職を目指すことは難易度が非常に高くなります。修士課程で優れた研究成果を出していることが、必ずしも大企業へのスムーズな就職につながるわけではありません。特に大企業での正社員採用は「狭き門」といわざるを得ません。
そのため、バイオ関連の大企業で働くことを目指す場合、第一歩目として派遣での就職も選択肢に入れることがおすすめです。正社員採用と比較して派遣での就業はしやすいため、バイオ関連の大企業で働く経験を得られる可能性が高まります。
大企業での就業を目指す場合、派遣が有利だといえる理由はいくつかあります。
まず派遣求人は特定業務におけるメンバー欠員などを理由に募集が行われるため、スキルや経験が合えば採用される可能性が高まります。
また、派遣はピンポイントでスキルマッチする人材確保を目的としており、正社員採用と比較して、就業までの段取りもスピーディーに進む傾向があります。一方、正社員採用は業務適性の他に、本人のキャリアビジョンと企業の方向性との合致度なども考慮されるため、選考過程に多く時間がかかる傾向があります。さらに、正社員採用では、書類選考を通過した後も面接が複数回実施されるのが一般的です。
派遣を選択肢の1つに入れる場合、派遣社員と正社員の違いについて正確に把握しておくことが不可欠です。バイオ系の就職を目指す上でも、派遣と正社員で雇用形態、待遇、条件、環境がどのように異なるのか、以下簡単に説明します。
・雇用形態
派遣社員は派遣会社と雇用契約を締結します。その後、派遣会社がバイオ系企業への就業を斡旋する流れです。一方の正社員は企業と直接雇用契約を結びます。社会保険や賞与、退職金制度、福利厚生などは雇用元企業の提供内容に準じて受けることができます。
・雇用期間
派遣社員が同じ派遣先で勤務できる期間の上限は3年と定められています。3年が経過したら原則として勤務継続はできませんが、場合によっては正社員登用の可能性もあります。それに対して、正社員の雇用期間は定めがありません。
・収入
派遣社員の収入は時給ベースで計算されることがほとんどであり、正社員は月給制であることが多いです。正社員のほうが毎月固定額の給与を受け取ることができますが、月単位で換算した場合、例えば、新入社員に比べて派遣社員の収入が上回ることもあります。
・労働時間
派遣求人の中には、時短勤務可や週3・4日勤務可の求人があります。業務の特性上、正社員と比較して残業が必要な場面も少ない傾向にあるため、ワークライフバランスを実現しやすいといえるでしょう。
正社員採用と比較すると派遣のほうが、バイオ系企業での研究職ポジションに携われる可能性は高まります。しかし、派遣においても求人倍率は高く、就業のチャンスを逃さないようにするためには求職の意欲やこまめなアクションが欠かせません。
バイオ系大企業への派遣就業を目指す人がやっておきたい、3つのポイントについて説明します。
1つ目は自分のバイオ領域における研究・知見の棚卸しを入念に実施することです。
派遣社員、正社員問わず、大企業は応募者に即戦力を求めています。特に院卒学生であればなおさらです。ただ、志望する企業の主要分野と自分の専門分野がぴったり当てはまる場合はまれだといえるでしょう。そのため、大学や大学院で何を研究してきたかということだけでなく、研究者としてどのような能力や知見、スキルをもっているかという機能軸での強みを分析して、アピールすることが必要です。
例えば、課題を解決するために仮説を立案し、論理的に検証する仮説検証能力はどの研究分野でも当然のごとく求められます。学生時代や就業後のキャリアでの研究内容・実績を踏まえたうえで、課題解決における自身のアプローチの仕方をしっかりとアピールできるようにしましょう。
派遣の場合は特定業務や研究に関する採用の可能性が高いため、なおさら自身の優位性を伝えることが大切です。
2つ目のポイントは業界や市場の動向・トレンドを見極めることです。
バイオ系においても、生物の持つ特性を活かしてさまざまな領域に役立てる技術であるバイオテクノロジーは、政府、民間問わず、今後の社会問題を解決する手段として注目されています。例えば、日本の「骨太方針2022」において「バイオものづくり」は、「海洋汚染、食糧・資源不足など地球規模での社会的課題の解決と、経済成長を可能とする、二兎を追える研究分野」としています。また、経団連は2023年3月に「バイオトランスフォーメーション(BX)戦略」を公表し、政府の「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する」バイオ戦略と歩調を合わせることを明らかにしました。
こうしたバイオテクノロジーに重点を置くトレンドは海外でも顕著であり、2022年9月に米国バイデン大統領はバイオエコノミーに関する大統領令を出しました。その中で、生物的な製造プロセスが石油化学ベースにとってかわり、21世紀末には世界の生産額の3分の1を占めるとも述べています。
バイオ系大企業を目指すなら、こうした国内外の最新のトレンドに注視し、自身の専門や培ってきたスキルや経験をどの領域で活かせるのか、業界分析も欠かせないでしょう。
3つ目のポイントは、求人サイトを定期的にチェックしておくことです。特に派遣求人は募集開始からクローズまで掲載期間が短い傾向にあるため、常に求人情報にアンテナを張っておく意識が重要です。自分の研究やスキル・経験とマッチした求人を見逃さずに見つけ、タイミングよく応募できるかがバイオ系就活の1つのコツといえるでしょう。
「Laboしごと」にもバイオ系の求人が豊富に掲載されているため、定期的にチェックしてバイオ系求人の情報収集にぜひお役立てください。
派遣社員が同じ勤務先で働ける期間は3年が上限です。契約期間の満了に伴い、別の派遣先などの働き口を探すのが一般的ですが、就業先での評価が高い場合は正社員化の声がかかるケースもあります。もし、派遣から正社員のキャリアパスを目指すなら、まずは地道に職場での評価を高めることが先決です。ただし大企業の研究職ポジションにおいて、派遣から正社員登用となるケースはきわめて少ないのが実情です。
正社員登用を目指す上で重要なのは、長期的な研究において派遣先の企業が目指すビジョンや事業計画を深く理解した上で自分の付加価値を示し、企業にとって必要な人材であることをアピールすることです。
ただ、企業によっては派遣社員のアピールの機会がそもそも限られているケースがあります。そのため、あらかじめ派遣会社に派遣先企業の正社員登用の実績や、雇用形態に関係なく分け隔てなく接してくれる職場かどうかなど、情報収集することが大切です。正社員登用の機会に恵まれやすいかそうでないかは派遣先によって異なるので、企業研究やリサーチに重きを置きましょう。
大企業での正社員雇用が難しい場合でも、派遣として就業した経験がその後の自身のキャリアにおいて有利に働く場合もあります。
バイオ系大企業へ派遣として就業した場合、先端の技術や研究設備、最新の業界情報や研究プロセス、時間軸などを間近で感じる機会を得られるのは大きな利点です。大企業への就業経験は、その後のキャリア形成上貴重な機会になります。
大企業で得た知見や体験、実務経験を携えてスタートアップ系のバイオベンチャーに派遣で転職し、そこで正社員登用につながるケースもあります。そのため、正社員になることを第一に考えている場合は、大企業に勤めたキャリアを上手く活用するのも手だといえるでしょう。
バイオ系大企業での研究職採用の機会があれば、雇用形態にとらわれずにチャンスをつかみ取ることは重要でしょう。派遣で大企業就職への突破口を開くことで、その後に予期しないチャンスが巡ってくるかもしれないからです。それだけ大企業のネームバリューや関わる領域の幅広さなど、派遣で勤めるうえでのアドバンテージは大きいといえます。
また、自身のキャリアにおける可能性を広げるためにも、自身のこれまでの経験やスキルとマッチした求人情報を知らせてくれる、人材派遣を有効活用することをおすすめします。
バイオ系大企業の研究職の求人数は少なく、就職も容易ではないという現状があります。そのため、バイオ系大企業での就業を考える上では、第一歩目として派遣社員での就業を選択肢の1つに入れておきましょう。
しかし、派遣でもバイオ系大企業への就職難易度が低いわけではありません。倍率は高いため、求人が出た際にはすぐに応募できるよう、日頃から、自身のバイオ領域における研究・知見の棚卸しを行い、アピールポイントの分析や、業界やマーケットの動向、トレンド研究をすることが重要です。また、定期的に「Laboしごと」を始めとしたバイオ・研究職に専門特化した派遣求人のチェックも欠かせません。
大企業で派遣として就業した場合、原則、上限期間は3年です。その後、派遣からの正社員雇用の道もありますが、蓋然性(がいぜんせい)は高くはないでしょう。しかし、大企業で先端の技術や知見を学び、視野を広げることは、その後のキャリアアップにつながる貴重な機会となります。大企業での就業経験を携えて、スタートアップ系バイオベンチャーへ派遣として働いた場合、その後の正社員登用というキャリアパスも見えてきます。
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