大学や公的研究機関を含むアカデミアは、自分の専門分野のテーマをとことん突き詰める基礎研究がベースのため、研究者にとって理想的な環境と言えるかもしれません。一方、安定したポストを得て、任期を気にせずに研究に専念できる人、自らの研究を世に出すことで社会貢献を果たせる人はほんの一握りという側面もあります。
そのため、アカデミアで働く上ではポスドク(任期付き研究職)やバイオ系技術補佐員(テクニシャン)として、研究者のサポート役に徹する方も少なくありません。
転職して自らが主体的に研究に取り組む道もありますが、アカデミアでの任期付従事者が転職するうえでは、どんな心がけが必要でしょうか。人材エージェントをうまく活用することは、1つの選択肢になるでしょう。
監修者プロフィール
まだ世の中に出回っていない原理を追究したり、専門分野をとことん突き詰めたりしたい方は基礎研究を志向するかもしれません。そうした方々には基礎研究をメインで行えるアカデミアは理想的な環境でしょう。しかし、大学や公共の研究機関で基礎研究を続け、大成できる研究者はほんの一握りという現実があります。
日本では1990年代以降、政府の方針で科学技術の振興を目指し、大学院の定員を大幅に増やしましたが、それに見合うだけの大学や研究機関のアカデミアのポストを確保できていないのが実情です。そのため、企業での研究職を目指したり、所属とは別のアカデミアの求人に応募したりするなど、他の選択肢を視野に入れて転職を目指す方も少なくありません。
基礎研究は専門分野の原理原則を追究することが多く、研究成果を出すためには多くの時間を要します。そのため、理想的なキャリアパスは、博士課程を修了後、教授の右腕としてポスドクを経験しつつ、専門研究の責任者である教授職などに就くことです。
しかし、2019年度の「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」によると、ポスドク15,591名のうち、大学教員などへ転出したのは10分の1以下の1,360名という、ポスドクの方が描く理想的なキャリアパスを歩める方は一握りという結果でした。
多くの人は博士課程修了後、無期雇用ではなく、任期付きの研究職など不安定な立場での研究を続けざるを得ない状況です。任期付きポストで働く場合、限られた期間のなかで、任期の更新や、より有利なポストを目指して成果を出さなければならないプレッシャーものしかかります。
また、研究者の「雇い止め(雇用契約の締結を止めること)」問題にも注意が必要です。これは、労働契約法改正により2013年から導入された「無期転換ルール」が背景にあります。「無期転換ルール」とは有期雇用で5年を超えて働いた場合、労働者が申し込むことで無期雇用に転換できる制度です。アカデミアの研究者は特例対象なので、5年ではなく10年で設定されています。
2013年の導入から10年を超える節目となる2023年4月、それまで働いていた労働者は無期雇用への申し込みが可能となりますが、大学や研究機関は無期雇用への転換を回避するため、2023年3月に労働者の雇い止めが起こる事態については多くの報道がなされました。
ポスドク問題とは、博士課程を修了した研究者がパーマネント職を得られずに、長年、任期付きの仕事に就く状況を指します。研究者は、任期切れや雇い止めの不安を常に抱えながら、研究を続けなければならず、不安定な立場に置かれているのです。
科学技術・学術政策研究所の調査によると、2018年度にポスドクとして大学や公的研究機関で研究に従事していたのは延べ15,590人にのぼります。ポスドクの専門分野は理学が最も多く、全体の36.8%を占めており、そのうち生物を専門とするポスドクの割合は32.1%で最大でした。ポスドク問題は、特にバイオ系の研究者にとって深刻であることが分かります。
任期研究員、もしくは、技術補佐員は契約期間が定められているため、契約期間満了までに次の仕事を探す必要があります。しかし、日々の研究と就職活動を両立するのは容易なことではありません。また、技術補佐員の方のなかには就活経験が少ないため選択肢が少なく、キャリア形成を検討する際に、技術補佐員として就職する以外の方法が分からないという方も意外と多いのが実情です。
一口に技術補佐員の仕事といっても、研究補助年数によってその後のキャリアプランが異なります。例えば、博士課程を修了後、経験の少ない20代などの若手の頃であれば、技術補佐員として研究者の補佐役を務めて経験を積み、任期満了に伴い転職する働き方も良いでしょう。しかし、30~40代となり経験を重ねるにつれ、できるだけ同じ研究機関や企業で安定的に働き続けることを望み、安定志向にシフトし始める方が多いようです。
任期付きポストで補佐的な業務に携わっている期間に比例して、転職活動をする際に自身のスキルや知見などの自己アピールポイントを客観視しづらくなる傾向があります。なぜなら、研究者の求人とは異なり、技術補佐員の求人のなかには、学歴や業務上行う実験手技等を求められないものも多くあるからです。
本来の希望とは異なる自身の専門ではない分野で研究補助をしている時でも、バイオ系研究職に対する情報感度を高め、より自分が活躍できる領域を模索する姿勢が求められます。また、そうした客観的な情報やトレンドを知るために、派遣会社や人材エージェントを活用することがきっかけになるでしょう。
アカデミアでの研究補助に携わってきた年数が長い場合、自分の経験や強みを生かしつつ転職する方法が分からない方もいるでしょう。就活経験が少ないため、派遣会社やエージェントの活用法が分からないという方も決して珍しくありません。派遣会社やエージェントを活用する方法やメリットについて紹介します。
バイオ系研究者の方は、企業よりも長く慣れ親しんだアカデミアの環境を希望される方が多い傾向にあります。そのため、例えばインターネットなどでアカデミアの求人案件を探して応募するのも1つの方法でしょう。しかし、アカデミアでの技術補佐員の求人であれば、派遣会社やエージェントを活用することで、これまでのキャリアで積んできた経験や専門などの強みを生かしたマッチングが可能です。
エージェントは、自分でも気づいていない自身の強みやアピールポイントを言語化することをサポートしてくれます。そのため、自身に対する新たな発見や、また、これまで選択肢になかった就職先候補が見つかる可能性もあります。
エージェントを選ぶなら、バイオ系に特化した専門性が高い会社がおすすめです。単に転職先を探してくれるだけでなく、求職者の思いや状況を汲んで「かゆい所に手が届く」サポートが期待できます。
バイオ系研究者ならではの研究補助歴が長いなどの特殊な事情も含めて、派遣先や転職先を紹介してくれます。一般的な派遣会社やエージェントでは理解しづらい、バイオ系研究職の就職事情についても、専門エージェントなら理解してくれているため安心です。
バイオ研究者が博士課程を修了しても、アカデミアで安定したパーマネント職に就くことは決して容易なことではありません。そのため、任期付きのポストでの別の就職先を模索するなど、将来に向けた選択肢を増やすことに努めましょう。ただ、任期満了ごとの就職活動と研究の両立は想像以上に大変です。また、技術補佐員として転職を繰り返すキャリアも大変なので、次の就職先でどんな働き方をしたいのか、そうしたプランもきちんと描いたうえでの転職活動を心掛けましょう。
技術補佐員が転職を成功させるうえでは、自分の強みやアピールポイントについてできるだけ客観的に把握しておくことは大切です。自身で客観的に把握するのが難しい場合は、派遣会社や専門エージェントの活用を視野にいれることをおすすめします。バイオ系に特化したエージェントに相談し、マッチングを斡旋してもらうことで、自身がこれまで積んできた経験や専門分野を活かし、長期的な視野を考慮に入れた転職が可能になるでしょう。
クリーク・アンド・リバー社が運営する「Laboしごと」では、バイオ系研究職の派遣・社員求人を多数掲載しています。また、転職活動アドバイスや、スキルアップ支援コンテンツなどのサービスも用意されています。
無料かつ、簡単に登録完了できるため、ご興味のある方はぜひ「会員登録」して、引き続きLaboしごとをお楽しみください。
>