バイオ系研究職を志すうえで多くの人がぶつかる壁が、自分の専門分野を生かせる就職先の少なさです。そのため、自分の専攻とは別の業種に就職したり、研究職であっても自分の希望と異なる領域を続けながら転職の機会をうかがったりするケースもあります。
そうしたバイオ系研究職におけるブランク(空白期間)は「バイオブランク」と呼ばれており、別の仕事を経てから再度バイオ系の職に就きたいと考える方は多い傾向にあります。一口にバイオ系のブランクといっても各専門領域により状況の差異はあるものの、結論から言えばブランクがあっても転職は可能です。
「バイオブランク」に陥っている方に向けて、希望の研究職に就くためのポイントや、派遣会社やエージェントの活用法について説明します。
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「バイオブランク」とは、単に仕事をしていない期間を指すのではなく、大学や企業で携わってきたバイオ関連の専門や研究から、離れざるを得ないことで生まれる空白期間を呼びます。
そもそも狭き門であるバイオ系の研究職に求職者が殺到するため、求人倍率は常に高い傾向になります。そのため、自身の研究領域に少しでも関連する求人であれば応募する流れがあり、実際に職に就けたとしても「希望していた研究ができない」などのミスマッチが生じがちです。
また、自分の専門領域や幅広い裁量を重視すれば、待遇面と乖離(かいり)することにもなりかねません。
そうしたバイオ系の雇用状況の実態ゆえに、他の職種に目を向ける求職者の方も多く、志す研究がありながらバイオ関連の仕事から離れる人も少なくありません。これらの理由により「バイオブランク」は発生します。
「バイオブランク」が発生する状況はさまざまですが、大前提として、研究職全体の中でバイオ系研究職の割合が少ないことが原因として挙げられます。
総務省が2021年12月に公表した「科学技術研究調査(結果の概要)」によると、2021年度の特定目的別研究費のうち、「情報通信」が占める割合は14.0%で、「環境」が7.0%でした。それに対して「バイオテクノロジー」はわずか1.3%という結果になりました。
ちなみに研究主体別研究費の割合を見ると、全体の62.0%が企業、23.1%が大学等、15.0%が非営利団体・公的機関によって占められています。
研究費の割合と研究者数の割合はある程度相関があると考えられ、研究職全体で見た際のバイオテクノロジー分野の研究者の割合も小さいと言えるでしょう。そして、企業のバイオ系研究職の間口はさらに絞られます。
バイオテクノロジー系の研究職では、ブランクが生じやすいのが実情です。そうした実情を踏まえて、採用側もブランクがあっても採用する企業が多い傾向にあります。たとえ、研究におけるブランクがある場合でも、専門知識や実績があれば就職できる可能性があるのです。
一方、「ブランクOK」の求人でも、ブランクのすべてが就職において許容されるとは限りません。例えば、学生時代にバイオ系の研究に取り組んだものの、卒業後は別業種に就職。その後、10年~20年を経てから「バイオ関連に復帰したい」という長期ブランクの場合は、転職には結びつきづらいと言えます。
企業での研究職の経験がまったくない場合は、学位(博士、修士)保持者であること、10年以上のブランクがある場合は、しっかりした実務経験があることなど、何かしら他の候補者と比べて強みを持っていることが必要になります。
バイオ関連の専門的な研究から離れている期間(ブランク)が長ければ長いほど、復帰できるか心配になるでしょう。なかには出産や家庭の事情などで仕事から一時的に離れたため、職歴がない空白期間がある方もいます。さまざまなブランクを抱える方がいる中で、どんな人材が採用されやすいのでしょうか。結論から言うと、専門性か経験のいずれかに秀でていることが必要です。
一口にバイオ関連といっても、遺伝子工学、分子生物学、蛋白質工学、微生物学、バイオ医工学など多岐にわたります。特定分野における専門性を証明するために有効な手段は、自分が専攻した分野での学位(修士・博士)があるかどうかです。学位がある場合は、企業での研究実績がない、あるいはわずかであっても、採用のチャンスにつながりやすいでしょう。
バイオ系研究職には大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは民間企業での研究職です。企業での研究はいかにマーケットのニーズを満たし、できるだけ早く利益に結びつけるかが重視されます。そのため、学問的には価値がある研究であっても、ビジネス的に売り上げにつながらなければ、企業では対象から外れることも多くあります。企業での研究は長期的な視野が必要な基礎研究よりも、応用研究が中心です。
もう一つは、大学や国立研究所など「アカデミア」と呼ばれる公的機関で働く研究職です。アカデミアと企業の決定的な違いは、短期的な営利目的かどうかです。アカデミアは基本的に非営利で、すぐに社会の役に立たないとしても、科学の発展や真理探究を目的として研究が行われます。
このように企業とアカデミアでは同じ研究職でも目的や研究スタイル、環境やマインドセットが大きく異なります。そのため、民間企業でも、アカデミアでもそれぞれの職場のカルチャーや業務プロセスについて精通していることは強みになります。
「バイオブランク」がある場合、自分で「バイオブランクOK求人」を探して応募するのも一つの方法ですが、採用情報がかなり限られるのが難点です。その点、派遣会社やエージェントであれば多くの情報を有しているため、選択肢が広がります。選択肢が広がれば、それだけ自分の専門分野や希望の研究職に就ける可能性が高まり、ミスマッチを回避しやすくなるでしょう。
また、ブランクの期間や理由などに応じて、受け入れられる求人も変わります。派遣会社やエージェントは、個人の事情に応じた最適な求人を提示してくれるため、採用に至る率も高まります。
「バイオブランク」がある方は、転職活動をする中で引け目を感じることが少なくないようです。「ブランクが転職に不利になる」とネガティブな気持ちを抱えたまま面接に臨むと、自信のなさが相手にも伝わってしまいます。
その際には、「バイオブランク」をいかにポジティブに捉えるかが大切です。ブランク期間について自分の言葉で「何をしていたのか」、「そこからどんな学びを得たのか」をキャリア全体から一貫性のある説明できれば、「バイオブランク」がマイナスに捉えられることも少なくなるでしょう。
この点、派遣会社やエージェントは客観的に候補者の強みを分析し、企業ごとにどのようにアピールすれば効果的か、伝えることができます。自分一人ではなく、派遣会社やエージェントの力を借りることで、就職活動をスムーズに進められる可能性が高まります。
求職者の専門性や経歴を把握した上で客観的に強みを発見し、多くの採用情報に照らしてマッチングを行うことができる派遣会社やエージェントを活用しない手はないでしょう。
特にバイオに精通した派遣会社やエージェントであれば、バイオ領域というブランクが発生しやすい特殊な状況をきちんと把握しています。また、個人的に探すのが難しいアカデミアとのつながりも持っているため、幅広い選択肢の中から自分の適性にあった就職先を見つけやすくなるでしょう。
バイオ領域では、専門領域や待遇のマッチングが難しく「バイオブランク」が生まれやすい実情がありますが、そのことを過度に引け目に感じる必要はありません。大切なのは、ブランクがあっても、自身がこれまで他の職で身につけた知見やスキルを生かすことができ、就職先企業や機関にとって、自分が信頼に足る有用な人材であることをしっかりアピールし、理解してもらうことです。
まずは自分の経験や専門性、学位について棚卸しした上で、自身が志向するバイオ系の研究内容や就職先でどんな活躍ができるかを自己分析しましょう。自分の適性が分かれば、ブランクOK求人との要項と比較しやすくなります。また、自分が企業での研究職志望なのか、アカデミアを望むのかについても明確にしておきたいところです。
自己分析を行ったり、就職先の情報提供をしてくれたり、全面的にバックアップしてくれる派遣会社やエージェントは心強い存在です。「バイオブランク」のある方は活用を検討してみるのはいかがでしょうか。
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